ふれあうことで⽣まれる⼼のゆとりは、 多様な⽣き⽅を受け⼊れる⼀歩になる

教育現場や家族のコミュニケーションに

医学の進歩や経済的な発展、衛⽣環境の改善が進んだ今、平均寿命は男⼥ともに80歳を超え、⼈⽣100 年時代へと変貌を遂げました。「働き⽅改⾰」どころか「⽣き⽅改⾰」を余儀なくされる時代になったともいえるのではないでしょうか。家族構成や仕事内容も多様化し、家族単位よりも「個⼈の暮らし」が重視されています。とはいえ、⼀⼈で⽣活することが難しくなった⼈に対して、ボランティアなどの援助が充実している欧⽶とくらべると、⽇本ではまだそこまで社会意識が醸成されていないように感じます。個⼈を尊重する社会の成熟度の違いでしょう。⽇本では⼈との距離感を⼤切にすることから、他⼈の⽣活には踏み込まないことを良しとしてきました。欧⽶のようにハグやキスなど、互いに触れ合って挨拶をする習慣を持たないのも、このあたりの精神性の違いによるものかもしれません。⽇本は諸外国とくらべて、圧倒的に触れ合いの機会が少ないのです。

触れ合いの技であるハンドケアをお伝えする講座は、2012年のスタート時から⼤きな反響をよび、今⽇に⾄るまで多くの⼈々に⽀持されてきました。これは、今まで習慣としていなかった触れ合いの⼒を、多くの⼈が感じ始めたからではないかと考えています。ハンドケアをすると⾎⾏が促がされ、動きにくかった⼿が楽になったり、体が温まって冷えを感じにくくなったりするばかりでなく、施術する側とされる側の双⽅に安⼼感や信頼感が⽣まれることを実感いただけます。⼼地よい触れ合いは体と⼼に良い影響を与え、ストレスを軽減することは学術的にも報告されてきています。

そんな今、看護や介護職のたくさんの⽅々がそれぞれの現場でハンドケアを⾏いたいと、講座に参加してくださっています。教育の現場や家族間でハンドケアを役⽴てたいという声も多く聞くようになりました。社会的な⽣き物である⼈間にとって、他者と良好な関係を保つことは重要です。しかし、他者との距離の取り⽅がわからずに不安を感じている⼈も多いのです。触れ合うことで⽣まれる⼼のゆとりは、相⼿への理解や多様な⽣き⽅を受け⼊れる⼀歩になるように感じています。

医療現場で、医療者と患者間のコミュニケーションツールとして、介護現場で、介護を受ける側と⾏う側の理解を深める⼿⽴てとして、そして家族同⼠の素直な⼼の触れ合いとして、ハンドケアが役⽴つことを期待しています。

佐佐木 景子
佐佐木 景子

ソフィアフィトセラピーカレッジ主任講師。⼀般社団法⼈⽇ 本フィトセラピー協会理事、⼀般社団法⼈⽇ 本ハンドケア協会副理事⻑。⻄九州⼤学客員教授。⼈間総合科学⼤学⾮常勤講師。アロマセラピスト。リフレクソロジスト。医療機関での15 年間におよぶホリスティックアロマケアの経験をもとに、看護や介護の現場での「てあてのケア」の普及活動を⾏っている。

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